アドラー氏とは
アルフレッド・アドラー:(1870~1937)
・オーストリアのウィーンにて出生。
・幼少期に肺炎やくる病、馬車にひかれるなどで死に直面する体験を繰り返し、死の恐怖を乗り越えようと医師を目指す。
・フロイトの勉強会に招待されて参加はしていたが、フロイトの理論に反論し、脱退。
・第一次世界大戦時、ロンドンやアメリカに旅立ち、講演などで人気を得る。
・大規模な講演旅行の途中、イギリスで心臓発作にて亡くなる。
・娘はシベリアの強制所にて死去。
アドラーの心理学
①原因でなく目的を重視
原因論:何が原因でその行動をするのか考える。
目的論:何を目的として行動するのか考える。
・ダイエットを例に挙げてみましょう。
原因論:太ってて馬鹿にされた。モテないから。
目的論:(なぜ痩せたいか考える。)素敵な恋がしたい。自分に自信を付けたい。
*原因だけにとらわれてしまうと、その人自身の考え(体形だけにこだわる)を変えることは出来ません。それよりも、「有用な目的」を持つことで視野が広がり、その人にとってより良い道(体形だけでなく他にも努力できることがあるんじゃないか)が見つかりやすいというのが勇気づけの心理学と言われるゆえんになっています。
目的の先にある目標
目的:短期的なもの。
目標:長期的なもの。としています。
例えば、
体を鍛える→ジョギングをする。(目的)
経済学を身に着ける→勉強する。(目的)
→社長になりたい(目標)
→お金持ちになりたい(目標)
→定年後、一年かけて世界一周旅行をしたい(大きな目標)
→安泰した老後を過ごしたい(もっと大きな目標)
と続いていきます。
アドラーの弟子たちは、「多くの目的→目標→更に大きな目標→もっと大きな目標」の流れを目標追求性と定義しています。
②要素還元論でなく全体論
要素還元論:体と心、理性と感情、意識と無意識など、部分ごとに別としてとらえる考え方。
全体論:心・体・行動・意識・無意識など全て含めて一人の人としてとらえる考え方。
全体論だと、「体が勝手に動いた」とか、「こんなことはしたくなかったのに、してしまった」と言った矛盾は生じません。
全ての行動・考えは同じ方向を向いているというのがアドラー心理学の考え方です。
目的のための行動を間違えると
目的:誰かに愛されたい=関心を持たれたい。
間違った行動例:目的を達成するためにリストカットを選択してしまう。
*愛されたいのに、死を選ぶという一見矛盾しているようですが、目的のための行動の選択を間違ってしまい無意味・自虐的になっています。
このケースの場合は愛されるために何が出来るか、行動を変更する必要があります。
③対人関係論
あらゆる悩みは、対人関係によってもたらされるとアドラーは考えています。人の行動は対人関係の問題を解決するために行動しているとの考え方が対人関係論です。
確かに一生一人で生きていく場合、人と比べる必要がなくなるので人間関係の悩みは無くなりますね。
*対人関係での悩みを解決する際も、目的が大事になってきます。
関係がこじれた原因を探るのではなく、今後良好な関係をどう築けば良いかを考えます。
ライフタスクと共同体感覚
ライフタスク:人間関係で生じる色々な問題の事をさします。
共同体感覚:ライフタスクを解決する際に必要なもので、自分が共同体の一部と考えて行動する感覚とアドラーは定義しています。
*共同体は学校や会社よりも大きな総体で「世の中」や「世間」のような人間同士の結びつきをさします。
昨今失われている共同体感覚
共同体感覚が育っている人は、仲間や友人、家族を大事にし、どのように行動すればみんなにとって良いか考えられる人です。
共同体感覚が育っていない人は自己中心的に行動し、欲望を抑えるストッパーが働かないため周囲をないがしろにしてまで自分を満足させようとします。
アドラーは、共同体感覚が育っている方が、幸福感につながるとしています。
④認知論
人は物事をとらえる時、それぞれの解釈で行います。
例:同じ湿度・気温でも、人によって「寒い・丁度良い・暑い」といった具合に解釈が異なります。
人それぞれ違った見方をする認知のバイアスですが、相手を理解する際にはアドバイス側も同様に共感できるよう努める必要があります。
このような共感をすることを推量と言います。
*極端に認知バイアス(解釈のパターン)がゆがむと、精神障害や犯罪につながることが有ります。
例:「嫌い」と言われているのに、「本当は好きなんだろう」と自分本位に解釈し、ストーカーになるなど。
その他、重要な要素
劣等感
劣等感があるから、人類は発展した。と言うのがアドラーの考えです。
劣等感を克服する行為を補償と言い、劣等感を持った人は様々な形で補償を考えます。
*補償の際にも、共同体感覚が重要です。
共同体感覚が未発達だと自己満足を優先する行動(犯罪など)を取りやすく、共同体に損害を与えることに対し抵抗を感じにくいのです。
コンプレックスを持つ人には勇気づけを
コンプレックスを持つ人に、「同意」や「手助け」はその人の依存性を高めてしまうので、正しい援助ではありません。
正しくは、劣等感を正面から受け止め、良いメッセージを投げかけることです。
嘘をつけというのではありません。
事実のうち、良い面を引き出してあげるのがアドラー心理学が勇気づけの心理学と言われるゆえんだと思います。
「なぜ?」でなく「どうしたら?」が重要
アドラー心理学では「なぜ?」(過去や原因)よりも「どうしたら?」(未来・目的)をまずは重要視しています。
*不登校の子に、原因を聞いても苦しませるだけかもしれません。それよりも「どうしたら学校に行けるか?」を考えさせてて、その目的に向かってその子の行動を変えることが有効としています。
アドラー心理学では、解決手段を見つけるサポートを「教える」「育てる」としています。
「いい子だね」は良い認め方でない
「いい子だね」「すごいね」は誰かに褒められることで成立します。
これが当たり前になると、「誰かに褒められるために行動する。褒められないと、無意味だ」となり、自立できなくなります。
*仕事をして誰からも褒められないと、モチベーションが下がり、褒めてくれない人に対し不満が出てくる。
周りから見ると、自己中心的な態度とみられてしまいます。
正しくは、「〇〇してくれて、お母さん嬉しいわ」や「〇〇してくれたおかげで、お父さん助かったよ」と間接的に褒めると、「誰かのために」と言う共同体感覚が育まれます。
**周りにいませんか?評価ばかり気にして仕事をしている人は。
甘やかされる(過干渉も)と自立できない
甘やかしだけでなく、必要以上の過干渉(ルール・規制)も甘やかしの一つとアドラーは考えています。
なぜなら、過干渉によって自分で判断する力(考える力)が付かず、自立できなくなってしまいます。
*親が必要以上に子供を厳しく管理・教育することは、「子供を信用していない」と言うネガティブメッセージを知らず知らずの内に子供に伝えていることになります。
過干渉は社会適応にも影響する
①失敗に弱い。
失敗を経験していないので、対処法が分からない。
②人に依存的。
誰かに意見をもらいたがる。自分から行動できない。
③他人からの批判に弱い。
批判されると、すぐ悩んだり落ち込んだりしてしまい、立ち直れない。
上司からの叱責や批判で挫折する若者が、典型的なタイプと言えます。
過干渉は共同体感覚が身に付かない
前述していますが、共同体感覚が無い子は社会で生きづらさを感じ、病気や衝突など起こします。
*自分の道案内をしてくれる人を探す傾向(依存)になり、また、自分が他人に何が出来るか分からなくなります。結局、職を転々としたり、引きこもりになりやすいと言えます。
しかし、ライフスタイルを変えて目的志向にすることで脱却する機会はもちろんあります。
無視され続けると
承認欲求が満たされず、自己肯定感が育ちません。
自己肯定感が無い子は共同体感覚が育たないので、周囲と信頼関係を結ぶことが出来ません。また、破壊的・衝動的行動に走ることが有ります。
*小さいころに承認欲求が満たされないと、わざと悪いことをしたり何にでも反抗し、関心を引こうとします。
最終的には、引きこもって「自分は何もできない」とアピールします。
これも、自分を構ってほしいという欲求の表れと言えます。
アドラー心理学 まとめ
・目的+目標と、そこに向かうための行動内容が大事。小さい目的選択を重ね、良い未来につなげる。
・共同体感覚を育てることで社会適応力が上がり、幸福感をより感じられる。
・目標を持つことで、生きる意味について考えることが出来る。
皆さん、如何だったでしょうか。
かくゆう私も、その日暮らしで特に目標もなく過ごしてきました。
少しアドラー心理学に触れることで前向きになり、些細な事に考えを縛られることは無くなるような気がします。
*コロナの影響による自粛で、気持ちがふさいでいる方も多いと思います。
そこで、未来の目標を立てることで少し気持ちが楽になっていただければと、アドラー氏の勇気づけの心理学まとめてみました。
少しでも参考になれば。
閲覧、ありがとうございました。
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